「不要だと思われるかもしれませんが、慣れない場所で不便なことも多いでしょう。何かあったときに頼れる存在ということで、どうかご了承ください。貴女にどうしても不自由をさせたくなくて」

「そんな……とんでもないことですわ。ブラントさまの温かいお気遣いに、心から感謝いたします」


 ブラントの言う通り、右も左も分からない中では、困ることも多いだろう。その度にブラントを頼るのも心苦しいので、こうして侍女を付けてもらえるのはありがたい。


「良かった。
よろしければこのあと、夕食をご一緒していただけますか? 一人で食べる食事は味気なくて……仕事の都合が合う日は、一緒に食事をしていただけると嬉しいです」

「もちろん。そうしていただけると、わたくしもとても嬉しいですわ」

「では、また後ほど。ラルカもしばらく、部屋でのんびりと過ごしてください」


 ブラントはそう言って、侍女たちを引き連れ、ラルカの部屋をあとにする。
 ラルカはほぅとため息を吐いた。