それ以降も、ラルカの気持ちが晴れることはなく、彼女は日に日にやつれていった。

 メイシュは既に王都には居ない。
 けれど、不思議と共に暮らしていた頃と同じかそれ以上に苦しく感じられる。

 侍女や侍従、寮住まいの同僚たちを見るたびに、ラルカはヒッと息を呑む。彼等の背後にメイシュの影を感じてしまう。

 朝起きることも辛ければ、仕事に行くことさえ気乗りしない。
 安心できる場所、帰りたいと思える場所がないことの与える影響が大きすぎるのだ。


 もちろん、皆がラルカを気の毒に思っているし、可能な形で手を差し伸べている。しかし、一度自由な生活を知ってしまったがゆえに、今のラルカには窮屈でたまらなかった。


(もう誰も信用できない)


 右を見ても左を見ても、メイシュに監視をされているような気がしてくる。
 毎日届くご機嫌伺いの手紙をクシャクシャに丸めながら、ラルカは一人膝を抱える。


(誰か、助けて……)


 逃げ場などどこにもない――――そうと知っていながら、願わずには居られなかった。


「ラルカ!」


 その時、背後から唐突に名前を呼ばれ、ラルカはビクリと背中を震わせる。


「あ……ブラントさま?」


 虚ろな瞳で応えれば、ブラントは驚きに目を瞠った。