「どうぞこちらに」


 ブラントに招き入れられ、一行は屋敷の中へと入る。

 外観同様、落ち着いた雰囲気のエントランスがラルカ達を迎えてくれた。白い壁紙、ワインレッドのカーペット。床や調度類等からは、至るところに木のぬくもりが感じられる。
 中央に設置された大きな階段、二階の窓から光が燦々と降り注ぎ、とても明るい。

 白やピンクで統一されたラプルペ家のタウンハウスは豪華で愛らしいが、ずっと居ると疲れてしまう。ラルカにとってソルディレン邸はかなり魅力的に映った。


「なるほどねぇ」


 メイシュが唸る。彼女は移動中、終始、じっくりと屋敷の中を観察していた。
 この屋敷が、ラルカにとって本当に相応しい場所なのか見定めているのだ。

 ラルカとブラントは時折目配せをしながら、メイシュの様子を見守る。


(どうか……どうか無事に婚約できますように)


 祈りながら、ラルカの胃がキリキリ痛む。

 応接室に着くと、クッキーやマドレーヌといった女性好みの茶菓子がたくさん並べられた。ドライフルーツやクルミ、ハーブを練り込んだ品もあり、見た目も華やかで、とても美味しい。あっさりと素朴な味わい、ほんのりと感じる蜂蜜の甘さに、ラルカは胸をときめかせる。
 メイシュが来てからというもの、バターや砂糖をふんだんに使った菓子ばかり食べていたので、とても新鮮だ。

 また、ロイヤルブルーのティーカップはあまりにも美しく、メイシュはうっとりと息を吐く。どうやら部屋の内装も含め、大層お気に召したらしい。


 彼女はラルカとブラントを並んで座らせる。そして、色んな角度から存分に眺めたあと、やがてほぅと頬を染めた。