「ふふっ! これで安心して領地に帰れるわ」
けれどその時、メイシュが漏らした言葉に、ラルカの心は一気に高揚する。
(姉さまが領地に帰る!)
思えばとても長い一ヶ月だった。
侍女の朝はとても早い。
ラルカが実際に行っているのは女官の仕事だが、メイシュには『侍女』ということになっている。整合性を図るため、ラルカは朝日が昇る前に屋敷を出なければならない。
寮からエルミラの私室までは十分程度で到着するが、ラプルペ家の屋敷からは四十分程掛かってしまう。
その癖、毎朝何十分も、人形のように着飾られるのだから、ラルカの心労は相当なものだ。
城に向かう馬車の中で泥のように眠り、到着してから人知れず化粧を落とす日々。
せめて週のうちの数日でも寮に戻りたいと訴え続けたが、メイシュは頑なで。
ついに、ラルカの願いを聞いてくれることはなかった。
(そんな日々ももうおしまい。良かった! ようやく……! ようやく姉さまが帰ってくれる! この家を出て、再び寮で自由な生活を謳歌できるのね!)
本当に、ブラントには感謝してもしきれない。
彼は紛うことなきラルカの救世主だ。
――――けれど、そう思ったのも束の間、メイシュはふ、と小さく笑う。
「帰るわよ? もちろん、ラルカが正式に婚約を結んだのを見届けてからだけどね。
ブラントさまのことも、私のこの目で、きちんと見定めないと」
メイシュの瞳がギラリと容赦なく光る。
(あぁ……ですよねぇ……)
それでこそメイシュ。一筋縄では行かない。
心のなかで一人嘆きつつ、ラルカは静かに頭を垂れた。
けれどその時、メイシュが漏らした言葉に、ラルカの心は一気に高揚する。
(姉さまが領地に帰る!)
思えばとても長い一ヶ月だった。
侍女の朝はとても早い。
ラルカが実際に行っているのは女官の仕事だが、メイシュには『侍女』ということになっている。整合性を図るため、ラルカは朝日が昇る前に屋敷を出なければならない。
寮からエルミラの私室までは十分程度で到着するが、ラプルペ家の屋敷からは四十分程掛かってしまう。
その癖、毎朝何十分も、人形のように着飾られるのだから、ラルカの心労は相当なものだ。
城に向かう馬車の中で泥のように眠り、到着してから人知れず化粧を落とす日々。
せめて週のうちの数日でも寮に戻りたいと訴え続けたが、メイシュは頑なで。
ついに、ラルカの願いを聞いてくれることはなかった。
(そんな日々ももうおしまい。良かった! ようやく……! ようやく姉さまが帰ってくれる! この家を出て、再び寮で自由な生活を謳歌できるのね!)
本当に、ブラントには感謝してもしきれない。
彼は紛うことなきラルカの救世主だ。
――――けれど、そう思ったのも束の間、メイシュはふ、と小さく笑う。
「帰るわよ? もちろん、ラルカが正式に婚約を結んだのを見届けてからだけどね。
ブラントさまのことも、私のこの目で、きちんと見定めないと」
メイシュの瞳がギラリと容赦なく光る。
(あぁ……ですよねぇ……)
それでこそメイシュ。一筋縄では行かない。
心のなかで一人嘆きつつ、ラルカは静かに頭を垂れた。



