「もちろん。ブラントさまは本当に素晴らしい男性ですわ。優しくて、わたくしには勿体ないほど……結婚するなら、彼が良いと思いましたの」


 決して疑念を抱かれてはいけない。ラルカは照れくさそうに頬を染める――――必死にそんな風を装った。


「そう! そうなの!
ああ、本当に良かった。ソルディレン家は由緒正しい名家だし、大層な資産家だもの。おまけに彼、すごく綺麗な顔立ちなんでしょう?」

「それはもう! お伽噺の王子様みたいに素敵な男性なの。背が高くて逞しくて。夜空に輝く星みたいな綺麗な髪色をしているのよ。間違いなく姉さまも気にいるわ!」


 ラルカが力説すれば、メイシュはそっと瞳を細める。


「そう……! それは素敵だわ。早く二人を並べてみたい。そんなに美しい人なら、私の可愛いラルカにピッタリね」


 メイシュはそう言って、ゆっくりと目を細める。
 その瞬間、首筋に爪を立てられたかのような、奇妙な感覚が走った。


(怖い……危なかったわ)


 ラルカの背筋がぶるりと震える。

 予想通り、ブラントはメイシュの眼鏡に適った。彼女の理想か、それ以上だったに違いない。

 けれど、もしもここで、ラルカに相応しくない(とメイシュが感じる)男性を選んでいたとしたら、メイシュの爪は、容赦なくラルカを引き裂いただろう。

 ラルカはあくまでメイシュのもの。彼女の意のままに動かなければならない。

 これまでも。
 ――――そして、これから先も。

 ラルカはゴクリと唾を呑んだ。