家に帰ると、メイシュがラルカを待ち構えていた。一目見れば、彼女が大層上機嫌だということがうかがえる。
 どうやらかなり興奮しているらしい。彼女は勢いよくラルカのことを抱きしめた。


「聞いたわよ、ラルカ! ソルディレン家のご子息と懇意にしているんですってね」


 メイシュは満面の笑みを浮かべながら、両手でラルカの頬を包み込む。


「え、ええ。実はそうなんですの」


 応えつつ、ラルカは密かに目を瞠った。


(すごいわ……もう姉さまに話が通っている)


 彼と話をしたのはほんの数時間前のこと。さすがに今日明日でメイシュにまで話が行くとは、ラルカは思っていなかった。

 当然、実際に動いたのは彼以外の人間だろうが、それにしても素晴らしい根回しっぷりだ。
 ブラントは騎士として強いだけでなく、かなり仕事ができるタイプなのだろう。ラルカは素直に感心した。


「さすが、私のラルカ! ブラントさまは貴女にゾッコンだそうよ! 是非、婚約に向けて話を進めていきたいと言われたわ。貴女も、彼が良いと思ったのよね?」


 尋ねながら、メイシュはそっと首を傾げる。

 まずい。
 ここで答えを間違えれば、自由な生活から遠ざかってしまう。
 ラルカは静かに息を呑んだ。