【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜

「ダメです! お待たせしていたのはわたくしなのですから、その……わたくしに言わせてください」


 半分涙目になったラルカを抱き寄せつつ、ブラントはコクリとうなずく。

 それからどのぐらい経っただろう。……それはブラントにとってまるで永遠のように長く、尊い一瞬だった。

 意を決したようにラルカがブラントを見上げる。その美しい瞳を見下ろしながら、ブラントは優しく微笑んだ。


「ブラントさま――わたくし、あなたと結婚したいです。……大好きなあなたとの子どもがほしい。どうかわたくしと、結婚してください」


 それはようやく導き出せたブラントからのプロポーズのこたえ。これからの人生をひとりではなく、二人で歩んでいきたいというラルカの強い想いだった。

 ブラントがうなずく。喜びのあまり、彼の瞳は涙で潤んでいた。


「ラルカ――僕が絶対にあなたを幸せにします。これから先の人生も、どうか僕と一緒に歩んでいってください」


 自由でなければ――ひとりでなければできないことがあるとラルカは思っていた。けれど、共に生きることで、幸せへの道筋はもっともっと増えていく。二人でなければできないことがたくさんある。


「はい! どうか末永く、よろしくお願いいたします」


 満面の笑みを浮かべるラルカを、ブラントは思いきり抱きしめるのだった。