「ラルカ! ブラントさまもいらっしゃい」


 部屋に入ると、すぐにメイシュが迎えてくれた。

 眉毛を描いた程度の薄化粧に、淡いピンク色の柔らかなドレス、髪は下のほうで緩く結んだだけ。これまでの彼女ならば考えられない服装だ。

 メイシュは『自分には似合わないから』という理由で、愛らしい服装を避けてきた。フリルやレース、リボンやピンク色はラルカのもの。反面、自身はハッキリとした色合いの、メリハリのついたドレスを着ることが多かった。化粧も濃ければ香水もキツい――豪奢な強い女性という印象だ。

 けれど、この部屋に漂うのは赤ちゃんの甘い香りだけ。よく見れば、以前とは壁紙の色も、調度類も、なにからなにまで変わっている。レースのカーテン、淡い色合いのチェストに、テーブルには可愛らしいティーセットが並ぶ――以前の、ラプルペ邸におけるラルカの部屋にとても近い。