「知らなかったで済ませちゃいけない――――本当にそのとおりだわ。
貴方たちを取り巻く劣悪な環境は、私が必ず改善します。
そのために、貴方たちにはこれから私と共に舞台に上がって、皆に約束をするところを見届けてほしいの。だって、ラルカの言う通り、今日の主役は他でもない。貴方たちだもの」


 エルミラが力強く微笑む。
 彼女の本気が子供たちにも伝わったのだろう。
 子供たちは神妙な面持ち互いに顔を見合わせ、それから大きく頷く。


「さあ! 皆様お待ちかねよ。行きましょう?」


 エルミラはそう言うと、颯爽と立ち上がり、前を向いた。
 子供たちが後に続く。ラルカは大きく微笑んだ。


「ラルカ」


 その時、ブラントに名前を呼ばれ、ラルカはそっと振り返る。

 彼はすぐ側に居ながら、ずっと口を挟まずにいてくれた。
 きっと、エルミラ以上に心配してくれただろうに――――子供たちに対して言いたいこともあっただろうに――――どこまでもラルカの意思を尊重してくれる彼に、愛しさがグッと込み上げてくる。


「ブラントさま」


 ラルカとブラントは微笑み合い、どちらともなく抱き締め合う。
 温かい。
 ブラントの腕の中で、ラルカは満面の笑みを浮かべる。


「――――約束通り、わたくしの話を聞いてくださいますか?」


 話したいこと、伝えたいことが山程ある。
 ブラントは穏やかに目を細めつつ、ラルカの額に口づける。


「ええ。楽しみにしています」


 二人は顔を見合わせると、もう一度互いを強く抱き締めあった。