「ラルカ!」


 舞台袖に着くと、エルミラがラルカのことを待ち構えていた。彼女はラルカをギュッと抱きしめ、微かに声を震わせる。


「良かった! すごく――――すっごく心配したんだからね⁉」


 王族である以上、エルミラは表立って動くことができない。周囲に動揺を悟らせてもいけない。
 騎士や女官達から報告を受けながら、一人ヤキモキしていたのである。


「ご心配をおかけして申し訳ございません、エルミラさま。ご覧の通り、ピンピンしておりますわ」

「当たり前よ! 貴女が無事じゃなかったら、タダじゃ置かなかったんだから!」


 今にも泣き出しそうなエルミラの表情に、ラルカは目元を和ませる。


「ありがとうございます。
それで――――事前にお伝えしましたとおり、本日の主役たちを連れてまいりましたの」


 ラルカはそう言って、孤児院の子供たちを振り返る。
 彼らにも、エルミラやアミルが王族であることは分かるらしい。緊張のあまり身体を強張らせた。