「ねぇ……待って、ラルカ! 何なの、その格好! その可愛くないドレスは⁉」


 ラルカのドレスは先程と――――メイシュ好みの一着とは違う。

 彼女は今、以前ブラントから贈られた、鮮やかな青色のドレスに着替えていた。


 スッキリと大人びたシルエット。

 今着ているドレスには、ふわりと広がるスカートも、コルセットで引き締められたウエストも、フリルもレースもリボンだって付いていない。
 淡く麗しい桃色でもなければ、鮮やかな紅色でもない。
 女性らしさ、愛らしさなど皆無に等しい。


 けれど、それで良い。
 それこそがラルカの目指す女性像だ。
 なりたいと思う己の姿だ。


 夕日を背に凛と立つラルカの姿は美しく、見ている人々を圧倒する。
 メイシュは大きく息を呑み、ラルカの姿に見惚れ――――それから首を横に振った。


「ダメ! ダメよ、そんな格好! 可愛くないわ! 私のラルカに相応しくない。今すぐ着替えて! 私は絶対認めないわ」

「お断りいたします。そもそも、姉さまに認めて頂く必要などございません。わたくしは、自分の着たい服を着ます。生きたいように生きていきます。
仕事は絶対に辞めません。
ブラントさまとの婚約も、絶対に破棄など致しません。
金輪際、貴女の指図は受けませんわ」


 ラルカの瞳は力強く、揺らぎない。
 
 少し前までメイシュが少し揺さぶれば、恐怖ですぐに支配できていたのが嘘のようだ。