「ああ、良かった! 今まで一体何処に居たの? すごく心配していたのよ! 
やっぱりこんな危ない仕事は辞めて、今すぐ領地に帰るべきだわ!」

(言うと思った)


 至極冷ややかな瞳でラルカがメイシュを見つめる。
 メイシュはそんなことはお構いなしに、自分の主張をまくし立てた。

 
「貴女の婚約者もすごく冷たかったのよ? 貴女を自分で探しもしないんだから。
オマケに彼、なんて言ったと思う? ラルカは強いって――――私に黙っていろだなんて言うのよ! 信じられる?
酷すぎるわ……ラルカは大事に大事に護られるべき存在なのに。貴女にはきっと、もっとふさわしい人が居るはずよ。大丈夫、姉さまが一緒に探してあげるから、彼との婚約を破棄して――――」

「退いてください、姉さま。今は貴女とお話をしている時間はございません」


 ラルカは言いながら、メイシュを己から引き剥がす。予想外の反応に、メイシュはあんぐりと口を開けた。


「なっ……ラルカ? 私がどれだけ貴女を心配していたと思ってるの?」

「存じ上げております。けれど、わたくしはもう良い大人。少し行方が知れないぐらいで、いちいち大騒ぎされては困ります。
それに、今は大事な仕事の最中です。邪魔をしないでください」

「邪魔⁉ この私に邪魔と言ったの⁉」

「ええ、その通りですわ」


 きっぱりとそう口にすると、ラルカはドレスの裾を翻す。

 夜空に揺れる青色のシルク。
 メイシュは思わず目を見開いた。