「さあ、皆。ここから先は、笑顔と度胸が何より肝心ですわ! ドレスや洋服はあくまでオマケ。今日の主役は他でもない貴方たちです! 堂々と胸を張って、わたくしに付いてきてください」


 子供たちには、ラルカが何を企んでいるか分からない。それでも、こうしてドレスアップをして誰かの前を歩くという経験に、なんとも形容し難い喜びを感じているようだ。
 彼らは躊躇いつつも、ラルカの後ろに続いていく。


「ラルカ!」


 けれどその時、何ともタイミングの悪いことに、ラルカはメイシュに呼び止められてしまった。見つかれば大騒ぎをするに違いない――――足止めを指示していたのだが、ついに誤魔化しきれなくなったのだろう。


「――――子供たちを先に舞台へ連れて行ってくれる?」

「はい、ラルカさま」


 化粧を手伝ってくれた侍女や同僚たちに命じれば、彼女たちは心得顔で頷く。子供たちの手を引き、すぐにこの場から連れ出してくれた。

 気を取り直し、ラルカはメイシュの方を向く。
 メイシュは大袈裟にため息を吐くと、ラルカのことをギュッと抱きしめた。