ラルカは大急ぎで支度を進めていった。

 子供たちに着替えをさせ、廃屋で梳かしただけの髪を綺麗に結う。
 血色がよく見えるよう頬紅を塗り、小さなティアラを頭に載せる。
 リーダー格の少年には、数年前にブラントが着ていたという騎士装束に着替えさせた。


「うん、完璧だわ!」


 どこからどう見ても、良家のお嬢様、子息にしか見えない。その素晴らしい出来栄えに、ラルカは手伝ってくれた侍女たちに賞賛を送った。
 

「すごい……こんな綺麗な格好するの、初めて」


 清潔な衣服を確保することすら難しい孤児院の子供たちにとって、ドレスを着るのは当然初めての経験だ。こうして化粧をしたり、髪を結うことだってそう。

 まだ物心のついていない小さな子供達は、「絵本のようだ」と、無邪気に、嬉しそうに笑っている。
 リーダー格の少年や、ラルカをおびき寄せた少女などは、ただ呆然と、鏡に映った自分たちを眺めていた。