(ラルカ)


 目を瞑り、愛しい人の名前を呼ぶ。
 早くラルカに会いたい。

 ブラントがそう思ったその時だった。
 騎士の一人が、酷く慌てた様子でブラントの元へと駆け寄ってくる。


「ラルカが見つかったのか⁉ 無事なんだな⁉」


 メイシュを刺激せぬよう小声で尋ねれば、騎士は小さく頷いた。


(良かった……)


 ブラントは大きく息を吐く。


「それで、ラルカ嬢からブラントさまにお願い事があるそうで」

「……! 分かった、すぐに行こう」


 ブース内の部下たちに指示を出し、ブラントはすぐにラルカの元へと向かう。


 北側のブースの一角――――ドレスの山に囲まれて、ラルカは穏やかに微笑んでいた。ブラントは目を見開きつつ、ゴクリと小さく息を呑む。


「お呼び立てしてすみません、ブラントさま。何分時間がなかったものですから」


 彼女の周囲には、薄汚れた洋服を着た子供たちが多数腰掛けている。どの子も小さく痩せ細り、親とイベントに来ているとは考えづらい――――恐らく孤児院の子供たちだろうとブラントは素早く察した。

 よく見れば、女の子たちの顔だけは綺麗に汚れが拭われ、鮮やかで美しい紅が塗られている。
 しかし、その反面、ラルカの頬やドレスの裾は、泥でドロドロに汚れていた。