「ラルカは強い」

「……え?」


 ブラントはもう、黙っていられなかった。
 取り乱し、目を見開くメイシュを冷ややかに睨みつけ、彼は静かに息を吐く。


「貴女が思うほどラルカは弱くない。彼女は寧ろ、とても強い女性です――――強くあろうと努力している人です。
僕はラルカを信じます。彼女は絶対に戻ってきます。
ですから、お姉さまはもう黙っていてください」

「な……なんですって⁉ 貴方、自分が一体何を言っているか、分かっているの⁉ 私が一言命じれば、貴方との婚約なんて幾らでも破談に出来るのよ⁉ ねぇ、聞いているの⁉」


 顔を真赤に染めながら、メイシュが拳を振り上げる。


(そんなこと、させるわけがない)


 ブラントは何も答えないまま、クルリと踵を返した。


 もうすぐイベントは終りを迎える。
 既に各ブースの受付は終了し、段階的に片付けが始まっていた。

 後は、最後に受付をした人々の着替えを見守り、エルミラとアミルが締めの挨拶をしたらイベントが終わる。

 エルミラやアミルもラルカのことは心配だろうが、今頃は己の責務に集中していることだろう。