ブラントとて本当は、自分自身でラルカを探しに行きたい。

 けれど、イベントの成功はラルカの悲願だ。そのために、今日まで必死で頑張ってきた。
 だから、大規模な捜索を行ってことを荒立てるわけには行かない。彼女はきっと、ブラントが持ち場を離れることすら望まないだろう。

 ブラントがすべきことは、現場責任者の一人として、最後までこのイベントを成功に導くこと。
 それこそが、ラルカの願いを叶えることに他ならない。

 彼は腹立たしさを隠しつつ、メイシュに向かって微笑んだ。


「既に騎士たちが数人、捜索に向かっております。お姉さまはどうぞ、ご安心ください」

「数人⁉ たったの数人ですって⁉ そんな悠長なことで良い訳がないでしょう⁉ 私のラルカに何かあったらどうするのです⁉ 
大体、貴方はあの子の婚約者でしょう⁉ 本当は貴方自身が探すべきなんじゃありませんの⁉」

「…………」


 たった数時間、誘拐声明の出ているわけでもない文官一人の捜索を行うこと自体、十分破格の扱いだ。

 けれど、メイシュにとって大事なのは彼女自身の考えだ。ラルカの願いが何なのか、想像しろと言ったところで聞きはしないだろうし、何を言ったところで、メイシュには伝わらないだろう。しかし――――