「ねぇ、ラルカは一体何処に居るの⁉」


 会場の隅でヒステリックな声が響き渡る。眉間にシワを寄せ、不機嫌であることを隠しもしない妙齢のその女性は、ラルカの姉であるメイシュだ。


「メイシュさま、どうか落ち着いてください」

「落ち着いてなんて居られないわ! 私の可愛いラルカが行方不明なのよ⁉ あぁ……やっぱりあの時、侍女なんて辞めさせていたら良かった。そしたら、こんなことにはならなかったのに……」


 会場内を右往左往しながら、メイシュは全く聞く耳を持たない。
 しかし、行方不明と言っても、ラルカの居場所が分からなくなって未だ三時間あまり。メイシュの中で、ラルカはまだ幼い子供のままなのだろう。


(とはいえ、僕だってラルカのことは心配だ)


 報告によれば、ラルカは具合の悪くなった子供の様子を見に行ったらしい。未だもって帰ってきていないということは、そこで何らかのトラブルに巻き込まれてしまったのだろう。

 責任感の強いラルカが、報告もなしに黙って長時間会場を離れるとは考えづらい。
 対処に困れば通行人を使ってでも、騎士や他の文官を呼びに行かせるだろうし、一旦会場に戻ってくるはずだ。
 それがないということは、余程の事情があるのだろう。