「ねぇ、教えて。どうしてこんなことを? それが分かれば、わたくしでも貴方たちにしてあげられることがあると思うの」

「うるせぇ! 綺麗事ばかり並べやがって! 施設の大人も、貴族も王族も、みんな大嫌いだ!
あんなイベント、失敗してしまえば良い! 今すぐ消えてなくなれば良いんだ!」


 ラルカは静かに息を呑み、目を瞠る。


(もしかしてこの子達は、イベントを失敗させるために、こんなことを?)


 確かに、ラルカが居なくなったことで騒ぎが起きれば、イベントは失敗するかもしれない。少なくとも、成功したとは評価されづらいだろう。主催者であるエルミラのためにも、それだけは避けたい。

 誤解を解かなければ――――ラルカはそっと身を乗り出した。


「あのね、あのイベントは、貴方たちのために開かれたものなのよ? イベントの収益は、子供たちの教育や孤児院の運営のために使われることになっていて、本や新しい洋服、玩具などが――――」

「そんなことは知ってるよ。だけど、そんなのどうせ口だけだ。金なんて、どうせ俺たちのためには使われない。クソみたいな大人の懐に入るだけだ。
寝床はボロボロ、ノミだらけ。冬になると、寒さに凍えながら眠れぬ夜を過ごすことになる。髪も、服もぐちゃぐちゃのまま、腹がいっぱいになることだって一度もない。オシャレだ剣だ云々は夢のまた夢だ! 明日をもしれない俺達が、将来を――――夢なんて大層なもんを描けるわけがないだろう⁉」


 ラルカは大きく息を呑む。目頭がとても熱くなった。