「なぁにが子供のためのイベントだ! 何もわかってない貴族が良い気になりやがって。俺たちがどんな生活をしているか、知りもしないくせに」


 少年が言う。ラルカを会場から連れ出した少女が頷き、それより小さな子供たちは状況が分かっていないのか、酷く虚ろな表情を浮かべていた。


「もしかして、貴方たちは王都の孤児院に住んでいるのかしら?」


 イベントのために、バザーの品物を作ってもらった孤児院の一つが近くにある。彼らの言動、連れてこられた場所等を鑑みるに、ほとんど間違いないだろう。


「だったら、何だって言うんだよ!」

「心配しないで? ただ確認したかっただけよ。
だけど、わたくしはこう見えてあのイベントの責任者の一人なの。会場に帰していただきたいのだけれど……」


 今頃、ラルカの姿が見えないことで、エルミラたちに心配をかけているに違いない。
 同僚の女官一人に『来場者の体調が悪くなったからブースを離れる』とだけ伝えてあるが、それだけでここまでの自体に陥っていることを想像するものは少ないだろう。事を荒立てたくはないし、今は大規模な捜索がされていないことを祈りたい。


「格好だけじゃなく、頭の中までお花畑なのね! そんなこと、させるわけがないでしょう?」


 少女が言う。まだ幼いのに、彼女の表情は憎悪にまみれ、激しく歪んでいた。余程ひどい目に合っているのだろうか? ラルカは胸が苦しくなる。