「ええ! 痩せて、少し大人っぽくなったのかしら? 幼い頃の貴女も可愛かったけれど、大人になったらまた別の可愛さがあるわね!」 


 メイシュはそう言って、ラルカの両頬を包み込んだ。
 以前ならば、全くもって素直に受け入れられなかった賛辞だが、今はほんの少しだけ気分が違う。

 最近のラルカは、同僚や騎士たちからも褒められることが増えた。
 元々、美人と評判だったが、輪をかけて美しくなったと――――ブラントの影響が大きいのだろうと、もっぱらの噂だ。

 たとえ相手がメイシュであっても、褒められて素直に嬉しいと思う。これもきっと、ブラントのおかげだろう。


「ありがとうございます、姉さま。
申し訳ございませんが、わたくしは仕事がありますので、そろそろ失礼いたします。
今日はどうか、楽しんでいってください」

「ええ。そうさせていただくわ。
また後で、ね」


 メイシュの返答に、ラルカはそっと微笑む。

 こんな穏やかな気持ちでメイシュの前に立てる日は、一生来ないと思っていた――――ラルカは胸を押さえつつ、ブースの中を見て回る。

 ラルカの実態を知れば、メイシュはきっと、再び彼女を縛り付けようとするだろう。無理やり仕事を辞めさせ、ブラントとの婚約を破棄し、領地に連行して自分の支配下に置こうとするに違いない。

 けれど、今のラルカはメイシュを跳ね除けられるだけの強さを持っている。
 きっと大丈夫。
 どんなことが起きても、怖くないと思えた。