ブラントの根回しは本当に完璧だった。メイシュの思考を上手く読み取り、情報操作を重ね、上手に協力へと漕ぎ着けてくれた。

 おまけに、今日までの数ヶ月間、ラルカとメイシュの接触を抑え続けてくれたのだ。彼には本気で頭が上がらない。


「……ありがとうございます、姉さま。姉さまのおかげで、今回のイベントが無事に開催できましたわ」

「ふふ、そうね。私の協力なしには成り立たなかったものね。
ところで、こちらのブースの責任者はどなたなの? 一応挨拶ぐらいはしていただいて然るべきだと思うのだけど」


 その瞬間、ラルカは思わず目を瞠る。

 このブースの責任者は、他ならぬラルカ自身だ。
 けれど、メイシュに対してラルカは侍女だということになっているので、そうと名乗り出るわけには行かない。

 言えば、今すぐ、無理やりにでも仕事を辞めさせられかねないからだ。


「――――っと、そうですわね……今は席を外しているようですわ」


 後でこっそり、同僚の女官にお願いをしよう――――密かにそう決意をし、ラルカは作り笑いを浮かべる。


「そう? だったら仕方ないわね。後で私のところに連れてきてちょうだい」

「ええ。後で必ずご紹介しますわ」

「よろしくね。
それはそうと、やっぱり私のラルカが一番可愛いわ! 久しぶりに会ったからかしら? 随分、綺麗になった気がするわね」

「……そう、でしょうか?」


 ラルカはほんのりと目を見開き、少しだけ頬を赤らめる。