「今日は一日よろしくね。頼りにしてるわ」


 侍女たちを前に、ラルカがニコリと微笑む。
 一時期は顔を見るのも嫌だったが、ブラントに護られ、自由を手にした今では気分が違う。彼女たち以上に頼もしい存在はいない――――ラルカはそう感じていた。


「お嬢様に声をかけていただけて、私共はとても嬉しく思っております。本日は精一杯、務めさせていただきますわ」


 侍女たちはそう言って、一斉に恭しく頭を下げる。ラルカは力強く頷いた。


 再会の挨拶もそこそこに、エルミラと二人、大きな鏡台の前に腰を掛ける。ズラリと並べられた化粧品類。侍女たちが二人を取り囲み、身を屈める。

 肌を滑る指の感触。
 白粉、頬紅が塗られ、眉を整え、鮮やかなアイシャドウで目元を彩る。
 目の縁にはくっきりとアイラン引き、人形のように大きな瞳をより一層際立たせる。鮮やかな色合の口紅を塗れば完成だ。


「なるほど……こうして貴女のドーリーフェイスが作られていたのね」


 エルミラが隣で目を瞠る。
 彼女にもラルカの侍女たちが付き、似たようなメイクが施されている最中だ。顔の造りが違うため、色合いやグラデーションの加減等、それぞれ工夫が成されている。