翌朝も、食卓にはブラントからの手紙が置かれていた。
 本人が屋敷に帰った形跡はないので、従者の誰かに託したのだろう。一体いつ、どのタイミングで従者に手紙を託したのだろう?
 ラルカは手紙を開きつつ、ブラントのことを思い浮かべる。

 その翌日も。
 そのまた翌日も。
 続けざまに数日、同じことが続いた。


 エルミラと共に休憩を取りながら、ブラントの手紙を何度も眺める。
 何とも言えないモヤモヤした気分に、ラルカは唇を尖らせた。


「何? ブラントって今、そんなに忙しいの? 屋敷に帰ってこれないほど?」


 状況を聞きながら、エルミラは驚きに目を見開く。自分たちが優雅に休憩を取りながら仕事をしているだけに、驚きもひとしおだ。


「そうなんです……。以前にも、多忙な時期があることはお聞きしていたのですが。
あの……エルミラさまは、アミル殿下から何か状況を聞いていらっしゃいませんか?」

「いいえ、何も。
そもそも、私達は食事も基本的に別々にとっているから、互いの状況はよく分からないのよ」


 予想通りの返答だが、ラルカは思わず落ち込んでしまう。

 同じ建物で働いているとはいえ、城内は広い。たまたまで遭遇する機会など皆無に等しい。
 エルミラですら状況が分からない以上、他の文官や騎士に尋ねたところで、返答は同じだろうし――――。