ブラントはきっと、ラルカの生活リズムを崩したくないと思ってくれているのだろう。ラルカに不自由をかけたくないと、彼は常々言ってくれていたのだから。
 けれど、ラルカとしては釈然としない。それがブラントの優しさだと分かっていても、嬉しいとは思えなかった。


 使用人たちに促され、重い足取りで朝食の席に着く。
 するとそこには、小さな花束と共にブラントからの手紙が置かれていた。


【おはよう、ラルカ。昨夜はよく眠れましたか?
残念ながら、しばらくは泊まり込みで仕事をすることになりそうです。ラルカは気にせず、どうかこれまでどおりの生活を続けてください。
決して不自由させないよう、使用人たちには強く言いつけています。
今日がラルカにとって、良い一日になりますように】


 手紙を読みながら、ラルカの胸がじわりと熱くなる。

 彼は一体、いつ、どのタイミングでこの手紙を書いたのだろう? 

 彼はきっと、いつも通りの優しい笑顔で、この手紙を認めたのだろう。
 ラルカのことを心から想いながら。
 そう思うと、目頭が熱くなってくる。

 そんな時間があるならば、少しでも休んでほしい。屋敷に帰る時間すら惜しんでいるくせに――――美しく丁寧な筆跡をなぞりながら、ラルカはブラントの顔を思い浮かべた。