(あの時……)


 目を瞑り、自分の気持ちを思い返す。何故かは分からないが、胸が強く軋む。「嫌でした」と、気づけば声に出して呟いていた。


「じゃあ、好きだと言われたときは?」


 エルミラの問い掛けを聞きながら、ラルカは小さく息を呑む。
 あの日のブラントの言葉を、笑顔を思い出すだけで、目頭がじわりと温かくなった。


「わたくしはきっと――――嬉しかったのだと思います。
けれど……」


 この気持がどこから来るものなのか、ラルカは知らない。
 どうしたら良いのかも、よく分からない。

 ブラントのことを考えると、優しい気持ちになれる。胸がほんのりと温かくなる。

 けれどその分、ときに甘く、ときに激しく心の中をかき乱され、自分が自分じゃなくなったかのような感覚を覚える。


(怖い)


 そもそも彼は、三年前のラルカしか知らない筈だ。
 三年前――――たまたま彼が求めていた言葉をタイミング良く口にできたというだけで。

 一ヶ月後、一週間後、もしかしたら今日にだって、ブラントが心変わりをするかもしれないのに。


「――――ほら、そんな顔しないの」


 エルミラがラルカの額をピンと小突く。ラルカは思わず目を見開いた。