「元々、ブラントさまは結婚を望んでいらっしゃらないと思っていたんですもの。婚約だって、いずれ解消する気満々でしたし。
それなのに、実はわたくしを想っていて、結婚を望んでいらっしゃるだなんて。そんなこと、いきなり言われても……」

「なに? 結婚を急かされたの?」

「いいえ。ブラントさまはわたくしの好きなようにと――いつまでも待つと仰ってくださいましたわ。けれど」


 ブラントは優しい。ここまで来て尚、ラルカの想いを優先しようとしてくれている。

 だからこそ、ラルカはどうしたら良いのかわからなくなる。
 このまま、彼の好意に甘えてしまって良いのだろうか?

 そんな風に思いながら、ブラントの告白以降も、二人はこれまでどおりの日常を続けている。


 ラルカの負担にならないようにという配慮だろうか――――彼があれ以降、愛を囁くことはない。

 けれど、ブラントの温かい言動が、行動が、彼の愛情を如実に物語っている。

 そのことが、ラルカの申し訳無さに拍車をかけていた。


「ねえ、ラルカ。ブラントが私を好きだと勘違いした時、どんな気持ちだった? 申し訳ないとか、心苦しい以外の感情はなかったの?」


 困ったように笑いながら、エルミラがラルカの肩を叩く。