「もちろんですわ。
そんな生活を送っては、食事に困ってしまいます。
ですから、義兄や使用人たちが、我が家の財政が破綻しないよう目を光らせてくれていますの。
だけど、こうしてみると、姉さまの趣味も相当なものですわよね。あの人はわたくしに新しいドレスを用意するためだけに、事業を頑張っているのですから」


 趣味にここまで傾倒できるということ自体すごいことだが、目的のためにメイシュが成功を収めていることもまた、紛れもない事実だ。
 無理やり付き合わされる方はたまったものではないが、その情熱や意欲だけは見習いたいものである。


「ところで、ラルカ。ずっと気になっていたんだけど」

「はい、なんでしょう?」

「ブラントと――――なにか進展があったんでしょう?」


 エルミラはそう言って、確信に満ちた笑みを浮かべる。ラルカの心臓がドキッと跳ねた。


「な、な、何か、とは?」

「そうねぇ……本物の婚約者に昇格した、とか?」


 揶揄するような物言いと表情。ラルカは必死になって、首を横に振った。