ドレスがずらりと並べられていく。普段は夜会や式典等で使われる、城内の一室だ。

 ピンクに赤、白にオレンジ。
 並ぶ色彩は鮮やかな原色系。実にカラフルだ。

 デザインもフリルにレース、リボンがふんだんにあしらわれており、華やかで美しい。

 次から次へと運び込まれるドレスを眺めながら、ラルカはふぅとため息を吐いた。


「……圧巻ねぇ。貴女がまさか、これほどまでに沢山のドレスを持っているとは思わなかったわ」


 半ば関心、半ば呆れたようにエルミラが呟く。

 この場に集められたドレスは、殆どがラルカの私物だ。侍女や他の女官のものも混ざっているが、全体の1割にも満たない。
 唖然とするエルミラを見遣りながら、ラルカは思わず苦笑を浮かべた。


「姉さまの趣味なのですわ。新しい物好きで――――収集癖に着せ替え癖がありますの。どれも似たようなデザインなのに、『ラルカには一度着たドレスはもう二度と袖を通させない』なんて馬鹿なことを言うのですよ?」

「それは……流石に冗談よね?」


 言いながら、エルミラは口の端を引き攣らせる。王族である自分ですら着回しをするのだ。一貴族の令嬢が、一年に365着も高価なドレスを新調するとは信じがたい。