「ラルカ。これで僕が、貴女を愛していると――――そう信じてくれますか?」


 けれど次の瞬間、ブラントが手の甲に再び口づける。ラルカはひゃっ! と大きく飛び上がった。


(そうでしたわ……!)


 昔話で和み、すっかり忘れてしまっていたが、元々そういう話の流れだった。


「初めて会ったその日から、僕の心は貴女のものでした。ラルカは誰よりも美しく、純真で、真っ直ぐで――――日々変わっていく貴女が、何よりも眩しかった。気付けばいつも目で追っていて、幸せで――――活き活きと仕事をする貴女を見ることは、僕の心の支えでした。
相応しい男になって、もう一度貴女に会いに行こうと、ずっと決めていました」


(ブラントさまは、本当にわたくしのことを……)


 心のなかで呟きつつ、少しずつ実感が湧いてくる。頬がありえない程に熱を帯びていくのが分かった。


「今すぐ答えが欲しいとは言いません。ラルカに不自由な思いをさせたくない。僕の想いが負担になって、嫌われたくはありませんから。
けれど、ゆっくりで良い。僕と生きることを考えてほしい」


 ブラントはそう言って、真剣な表情でラルカを見つめる。


「ラルカ――――僕は貴女を、心から愛しています」