「働く女性の何が悪い? 己の能力を活用して何が悪い?――――そう想うなら、君が貴族たちに、国民に、言葉と行動でそう示していけば良い。
妃となれば、エルミラの補佐としてではなく、自分のやりたいことを、やりたいようにできるようになる。
とても魅力的だと思わないか?」


 蠱惑的な笑み。ラルカは思わず視線を逸らす。

 アミルの言う通り、妃になれば、ラルカの想いを体現することは容易い。
 妃というのは、結婚をしても、子どもを産んでも、王族として公務をすることが当たり前という稀有な存在だ。
 国のために働きたい、ずっと働き続けたいというラルカの想いとも合致している。

 それ自体は間違いないのだが――――。


「それからもう一つ。
王族になってしまえば、君の親族とて、おいそれと君に干渉できなくなるだろう。何かを強要されることもなければ、言いなりになる必要もない。俺が全力で君を守ろう。
どうだい? まさに君の理想通りの生活だろう?」


 アミルの言葉に、ラルカは小さく息を呑む。


(姉さまから離れられる……)


 もう二度と、メイシュの影に怯えることも、惑わされることもない。
 妃となれば、そんな理想的な生活が送れるのだという。

 以前のラルカならば――――ブラントと出会う前ならば、ラルカは大手を振って喜んだだろう。