(わたくしを、妃に……?)


 アミルの問い掛けを反芻しつつ、ラルカは大きく目を瞠る。

 そんなこと、これまで一度も考えたことがなかった。

 そもそもラルカは、結婚をしたいと思ったこと自体がなかったし、妃になりたいという野望を抱いたことだってない。

 メイシュから離れて活き活きと仕事をし、自由な生活が送れたらそれが幸せで。

 自分に妃の適性があるとも思えないし、およそ現実的な話として受け止められなかった。


「よく考えてみてほしい。
この国において、女性が生きたいように生きることへの理解はまだまだ不十分だ。結婚をした女性は家に入り、子を育てるのが当たり前。外で仕事をすることは稀だ。
女性文官の数とて、年齢を重ねるごとに極端に少なくなっていく。
だからこそ、君はブラントと婚約をしたのだろう? 結婚の時期を最大限に引き延ばし、仕事を辞めずに済むように、と」

「え……ええ、その通りですわ。しかし…………」

「妃となれば、国を――人々の意識を変えることができる」


 アミルはそう言って、真っ直ぐにラルカを見つめる。