(結婚? わたくしが?)


 つい先日、強制退職の危機を免れたばかりだというのに、更なるピンチに見舞われてしまった。
 メイシュがあんな風に言うからには、結婚後は間違いなく仕事を続けさせてもらえない。侍女と文官の仕事の棲み分けを誤魔化すのとはわけが違う。


(どうしましょう)


 ラルカとしては、まだまだ仕事を続けていきたい。

 ようやく見つけた自分の居場所だ。能力だ。
 主人であるエルミラにも実力を認められ、頼りにされている。簡単に諦められるものじゃない。


 けれど一方で、メイシュには一刻も早く領地に戻って欲しいと思う。

 これ以上、きせかえ人形のような生活を送るのはゴメンだ。
 濃い化粧も、豪華なドレスも、他人が羨むような生活も、ラルカには不要だ。寧ろ鬱陶しいとすら思う。
 ラルカはただ、元の自由な生活を取り戻したかった。


 しかし、悲しいかな。そのためには、ラルカは誰かと婚約をしなければならない。

 まるで、出口のない迷路に迷い込んだかのような気がした。