「ああ、ラルカはどうか気になさらないでください。彼らが勝手に言っているだけですから、ね?」


 ラルカの肩を抱きながら、ブラントはニコリと微笑みを浮かべる。


「ブラントさま、ですがわたくしたちは……」

「本当に! 全く! 気にする必要はありません! 
何故ならラルカ。
貴女は既に――――僕の大切な婚約者なのですから」


 熱っぽく囁かれ、ラルカは思わず頬を染める。


(わたくしは、ブラントさまの婚約者……)


 心臓がドキドキと大きく鳴り響く。身体が燃えるように熱く、恥ずかしさのあまり涙が滲む。

 たとえ、いつか解消してしまう関係だとしても、今ラルカが彼の婚約者であることは紛れもない事実だ。
 ブラントとて、ラルカのことを婚約者だと――――大切な存在だと言ってくれている。


(嬉しい)


 そうと気づいたその瞬間、胸の中が甘ったるく、嬉しさがグッと込み上げてきた。

 何故だろう。
 ブラントの顔を見る度に、心臓がバクバクと暴れてしまう。
 ラルカはまともに彼の瞳を見ることができなくなってしまった。