ブラントはラルカの視線に気づくと、とても穏やかに微笑んでくれた。ラルカも負けじと微笑み返す。心なしか両者の頬が紅く染まった。


 互いの主人による畏まった挨拶を終えた後は、しばし歓談の時間が設けられる。
 文官に騎士、侍女たちは、皆が同じ城で仕事をしている筈なのに、配置先が異なるだけで殆ど接点がない。

 仕事を円滑に進めるためには、一にも二にもコミュニケーションが大事である。

 エルミラのそんな提案から、職務の垣根を超えて交流会が開かれる運びとなったのだ。


(さて、わたくしもしっかりと人脈を広げなくては……)


 主だったアミルの側近については、名前は知っていても顔を知らないものが殆どだ。
 しっかり顔と名前を一致させて、連携を取っていかなければならない。


「ラルカ嬢、是非私と話をしましょう!」

「いいえ、是非俺と!」


 けれど、無礼講になった瞬間、ラルカはアミルの近衛騎士たちに取り囲まれてしまった。


「わたくし、ですか?」


 もちろん、今後騎士たちとやり取りする機会も多くなるだろうが、ラルカにとっての優先順位は低い。今回の場合はどちらかといえば、実際に仕事を割り振ることになるであろう侍女や文官たちと交流を深めたいのだが。

 思わぬ展開に目を丸くしていると、すぐにブラントが飛んできた。