「そうですねぇ……男の子の場合はオシャレよりも、体を動かしたいタイプが多いですから。
僕や殿下の子供の頃の服を用意しても、喜ばないでしょうね。何なら、会場に付いていくことを躊躇ってしまうかも。待ち時間が長いことを嫌う男性は多いですし、居心地の悪さを感じてしまいそうで」

「そうなんです。わたくしもそう思います。
けれど、わたくしには、男性が喜ぶものが思いつかなくて……」


 言いながら、ラルカはしょんぼりと肩を落とす。
 ブラントはしばし眉根を寄せて押し黙っていたが、やがてポンと小さく手を叩いた。


「……でしたら、僕たち騎士たちが、子供たちに無料で剣技の指導をする、というのはどうでしょう?」

「剣技の指導、ですか?」


 全く思いがけない提案をされ、ラルカは瞳を瞬かせる。


「ええ。僕が文官ではなく騎士を目指したのだって『剣はカッコいい』という意識があったからですし、小さな男の子を相手にじっとしていろ、買い物に付き合えというのは酷な話です。
ですから、女性陣を待っている間に、思い切り体を動かす場を作ってあげることをオススメします。
剣技と――――乗馬体験を用意するのも良いですね。ラルカの提案した『憧れを体験する』というものに繋がる部分もあると思うのですが、如何でしょう?」