「あらあら、貴族の夫人だって立派な仕事よ?」


 メイシュはそう言って、大きく首を傾げる。


「家を守り、夫の仕事を支え、誇り高い華として生きていく。今している仕事と、一体何が違うというの?」

「それは…………」


 返す言葉が見つからない。ラルカは眉間にシワを寄せた。

 メイシュはふわりと微笑むと、侍従たちに目配せをする。すると、ラルカの目の前に、釣書がドサリと重ねられた。


「この二週間の間に私が見繕った貴女の結婚候補者たちよ。家柄も将来性もバッチリな殿方を選んだから、ラルカもきっと気にいるわ。もちろん、全員とてもハンサムなの! 
当然よね。とびきり可愛い貴女の隣には、最高に素敵な男性が並ばなきゃいけないんだもの。
ああ! 結婚式が今からとても楽しみだわ! 最高に素敵なウエディングドレスを準備しなくちゃ! 想像するだけでワクワクしちゃう」


 夢見る乙女のような表情を浮かべ、メイシュはそっと天を仰ぐ。


「そういうわけだから。きちんと候補者を選ぶのよ! 貴女の婚約を見届けるまで、私は王都を動かないから」


 メイシュはそう言ってドレスの裾を翻し、颯爽と部屋をあとにする。

 残されたラルカは、しばし呆然としてしまった。