「けれどブラントさま、忙しい貴方の手をわずらわせるわけには……」

「いえいえ。忙しいのはお互い様です。そこに男性だから、女性だからという括りはないでしょう?」

「それは……おっしゃる通りだと思いますわ」
 

 性別が『女性』だからというだけで、軽視する男性はごまんとんいる。全く同じ仕事をしていても、だ。
 ブラントのように言ってくれる男性は寧ろ珍しい。これまで交わしてきた文官たちとの会話を思い返しつつ、ラルカの心がほんのりと温かくなる。


「それに、僕はもう二度と、貴女をお姉さまの件で苦しませたくありません。
大丈夫。そういう根回しや交渉は得意ですから。ラルカは大船に乗った気でいてください。
僕は貴女のためにできることがあることが、とても嬉しいのですから」


 ブラントの言葉は、あまりにも優しく、頼もしい。ラルカの目頭が熱くなった。


「ありがとうございます、ブラントさま。そうしていただけると、本当にとても助かります」

「婚約者として当然のことです。どうぞ、お任せください。
ところで、イベント当日は沢山人が集まりそうですね。僕の方からもアミル殿下に状況をお話して、警備を強化できるようにしておきますね」

「……! そんなことまでしていただけるのですか?」