翌朝、ラルカはいつもより数段、上機嫌に身支度を整えていた。
 薄化粧を施し、ゆるりと髪を纏め、最後にブラントから貰った髪飾りを添える。


(本当に、すごく綺麗……)


 鏡の中の自分を見つめつつ、ついつい惚れ惚れしてしまう。うっとりと瞳を細めながら、ラルカは微笑みを浮かべた。

 東洋で作られたというその髪飾りは、変わった形状をしている。けれど、洋装にもとても合うため、職場で付けても浮かないだろう。

 もう一度、様々な角度から身だしなみをチェックしたあと、私室を出る。
 すると、タイミングよく、ブラントと行き合った。


「おはようございます、ブラントさま」

「おはよう、ラルカ。昨日はよく眠れましたか?」

「はい、とても。ぐっすり眠れましたわ」


 昨日は観劇のあと、レストランで食事をしてから帰路に着いた。

 邸についた頃にはもうクタクタ。
 けれどそれは、とても心地の良い疲労感だった。

 侍女たちが温かいお風呂や安眠効果のあるお茶を用意してくれた甲斐もあり、疲れは全く残っていない。寧ろ、普段よりも清々しい気分だ。