いつもと違う夜ゴト


次に二人が会ったのは、それから10日後だった。


いつものようにF美のアパートに赴いたS氏はベッドに腰を下ろし、今回のシナリオを尋ねたのだが…。


「はあ…?F美、どういことだよ、AVの撮影、一昨日あったんだろう?」


「あったわ。だから、なり切り劇場はやるわ。エッチなしでね…。もう始まってるし‥」


「えっ…?…それって、お前…」


「さあ、答えて。この前の夜、ここで言ったこと、嘘じゃないって。愛してるんでしょ、私のこと!私のカラダがなけりゃ、生きて行けないって言ってたわよね?」


「ちょっと待てよ、アレはいつものなり切り劇場の中でのことだろう?」


「じゃあ、私のカラダ、サイコーっていったのは嘘ね?」


「いや、あれはホントだ。お前のカラダはサイコーさ」


「私を愛してるのも?」


「ああ、まあ…、愛してはいる。でもよう…」


「奥さんよりもって、言ってたわ」


「 ...」


***


「あのなあ…、確かにF美のことは愛してるが、カミさんとのそれはまた違うって」


「…あのさ、例のAV企画、ホントのダブル不倫のカップルが出演してたのよ。それで撮影前のインタビューでは、当人たちは体だけの倦怠期に陥ってるセフレ関係だと思い込んでいたわ。で…、制作サイドはまあ、刺激を演出してね、ベッドインさせた訳よ。それは濃艶なセックスだったわ。そしたら撮影後に、二人は悟ったのよ。お互いが本当に愛しあってるって…。互いのカラダでハメ合わないと生きて行けない、別れることなんてできないとね」


「…」


「…要はこの不倫関係こそ、倦怠感の理由なんだって気付いたの。だから、二人の今の関係を絶てば、解決できるって結論を導いたわ


「それで、その二人は結局…」


「二人は深く本気で愛し合っていた。それが改めて確かめ合えたので、不倫関係には終止符打つことを誓い合っていたわ。私、感動しちゃって…。だから、これは絶対なり切り続けようって決めたのよ」


「おい…!それで、その不倫関係やめて、その二人はどんな関係を…」


「決まってるじゃない。お互い離婚して、結婚よ。だって、一番愛してるんだもん。二人とも、相手のカラダなしじゃあ生きて行けないんだもの。そしたら、死ぬか、結婚するかどっちかよ」


「!!!」