再び、いつもと同じ夜ゴト



「さあ、準備できたわ!申し合わせ、行きましょう~💛」


「おお、了解だ❣」


二人のなり切り劇場前のお決まり、事前申し合わせが始まった。


「ハハハ…、そういうことか。要は、今夜のシュチエーション、倦怠期の不倫カップルが心機一転、互いのセフレとのエッチ撮り動画を見せあいながら、刺激を煽るって趣向だな。そんで、互いにムラムラ欲情した段でベッドインってシナリオか…。その後は、セックスレス夫婦のカムバックエクスタシーならぬ、塾エッチに突入~ってことだな❓」


「まあ…、表面的にはそうなんだけどさ、キモはそこじゃないわ。エッチを興じるための不倫から、愛ある行為にメンタルがスライドする流れなのよ」


「はあ…❓❓」


***


「…先日のAV撮影のテーマはさ、いつの間にか長く乾いた不倫関係に陥っていた二人がね、マンネリ打破で互いのセフレとのハメ撮りで刺激し合って、さあ、互いにコーフンしたから、レッツエッチってノリなのよ。確かに当初はね。でもね」


ここで彼女の目が、一瞬、明らかにギラリと光るのをS氏は見逃さなかった。



「…お互いのipad観てねそ、性的刺激以外の何かが二人を貫通した…。そして、いざ抱き合うと、これまでと違った相手への感情が生まれるの。ああ、ラフストーリーは原稿起こしてきたから、セリフとかはこのプリントアウト見て…。その間、シャワー浴びてくるわん❣(笑&チュー)」


そのあと、S氏はもう一本缶ビールを冷蔵庫からとりだし、本日のシナリオに再度目を通した。


”なになに~、ふーん、アハハ…!何か今日の設定はかなり凝ってるな。たかだかAVだろ。所詮、ストーリーなんぞと言ったって、セックスに至るまでのシュチエーション作りと艶技の絵柄、背景…、それとあえて言えばオチか。文芸ものじゃあるまいし、テーマがどうのこうのはカンケーねーだろ~~が?”


ともあれ、責めも受けもソフトからハードまで、ことエッチに関してはオールラウンドプレーヤーを自負するS氏は、ややイレギュラーな今回の設定にも余裕をかまして、テーブルにあったポテトチップをバリバリ口に頬張り、F美の”帰還”を待つのだった…。