柔らかい、風が吹く。陽の光を浴び続けて少し熱くなった髪が、その熱を逃がすようにバラバラと揺れる。真上にある枝からは、ピンク色の花びらが何枚か降ってきて、掴めそうだと思って手を伸ばすと、あと数センチのところですり抜ける。行き場の無くなった手を降ろしかけた時、小さな足音が近づいてくる。淡々と、地面を踏む心地良い音が、私の方へ歩いてくる。吹かれた髪を耳にかけて、私は足音の先を、振り返る。

そんな、夢を見ていた。