麓の街に到着すると、パール服飾店の店主の身柄を確保したという報告を受けた。
 ライラ様の馬車はまだ到着していないようだ。

 そのまま辺境伯家まで馬車を走らせ、待機していた隊員たちに犯罪者たちを地下牢に拘留するよう指示を出した。
 荷台からまず姿を現した隊長の姿に皆がギョッとしていたのは言うまでもない。
 賊を捕まえるために荷台からダイブした時だろうか、巻きスカートの布は裂け、銀髪のウィッグもぐちゃぐちゃだ。
 汗をかいたせいで化粧も滲んでしまい、もはやオバケのような姿だったのだ。

 この姿とあの奇妙なオネエ言葉でここまで説教され続けてきた男たちが気の毒になってしまった。
 しかし取り調べはしっかりさせてもらう。

 タイミングの悪いことにその時、ライラ様の乗った馬車が麓の街に到着し、騎馬隊に護衛されながらこちらへ向かっているという一報がもたらされた。

 もう女装し直している時間がない。
 マリエル様を窺ったが、顔がオバケすぎて表情が読めない。
「着替える。カーク、手伝ってくれ」
「かしこまりました」
 大股で屋敷の中へと入る我が主の後ろ姿を追った。