その日は結局何も伝令はなく、ライラ様の訪問と鏡の仕掛けを関連付けた疑惑が杞憂に終わればと思いながら迎えた翌朝のこと。
 一羽の伝書鳩によってトーニャからの情報がもたらされたのだった。

 パール服飾店の店主が朝礼で「今日の昼過ぎに店の倉庫に大きな荷物がいくつか届く。多少物音が響くかもしれないが作業の邪魔にならぬよう午後は倉庫に立ち入らないように」という指示を出したらしい。
 やはり狙いはライラ様であると考えるのが妥当だが、そうでない場合も考慮すべきだろう。
 この情報と鏡の仕掛けという証拠だけで店主を捕えればいいと考えるのは早計だ。
 しらを切りとおされる可能性が高い。
 ここは囮がかどわかされるという状況を作って、黒幕が誰であるかを突き止めなければならない。
 その囮となるのが……我が主だ。

 成り行きで致し方なかったとはいえ、なんでこうなった。
 こんなゴリゴリの筋肉質なご令嬢なんているはずないだろう!
 そう思うのだが、本人が妙に張り切っているし、賊を捕えるという点においてはこれ以上頼もしい人など存在しない。
 後はもう、なるようになれだ。