Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜

公安警察の部署に入り挨拶をする。すると、徹夜をしていた何人かが「おはようございます……」と目の下に隈を作りながら元気なく挨拶を返した。

「九条さ〜ん……徹夜で資料、仕上げましたよ〜……。あと、九条さんの始末書も提出しておきました〜」

桜士が自分のデスクに腰を下ろすと、フラフラと桜士の後輩である灰原十(はいばらみつる)が資料を手にやって来る。十は今日で四日も徹夜をしているためか、他の公安警察よりも目の下の隈も濃い。

「ありがとな。……隈、すごいぞ。もう仮眠室で休んで来い」

「ありがとうございま〜す……」

フラフラとしながら十は部署を出て行く。その後ろ姿を見送りつつ、仕事を始めるかと桜士が息を吐いたその時、「九条くん、ちょっといいかな」と声をかけられる。

「安藤(あんどう)警視正!」

ニコニコと笑いながら立っていたのは、桜士の上司だった。桜士はすぐに立ち上がり、彼を真っ直ぐ見つめる。

「どうかされましたか?」

「君に頼みたいことがあってね」