言われている言葉の意味がわからない。戸惑う一花に、諦めたように遥香は笑う。

「私の心臓ね、誰かから新しい心臓を貰わないといけないんだって。だけどね、くれる人がいないんだって。だから私、もうすぐ死んじゃうかもって言ってた」

「えっ……」

一花の頬を涙が伝う。心臓移植ーーーそれがどんなものなのかまだ一花にはわからない。だが、遥香が死んでしまうそのことがとても悲しかった。遥香の目からも涙が溢れていく。

「……生きて、お医者さんになって色んな人を救いたかったなぁ……。大人になりたかった……」

そう言う遥香の手を一花は震える手で握る。そして、言った。

「……なるよ……。私、私が、遥香ちゃんの代わりに立派なお医者さんになって、いっぱいいっぱい色んな人を助けるから!遥香ちゃんの病気も、私が治すから!約束!」

小指をそっと一花は差し出す。遥香は泣きながら笑い、差し出された小指に自分の指を絡ませる。

「うん、約束!」

その日の夜、遥香は天国に旅立った。