「遊べる友達なんていないよ。だって、みんな私のこと「気持ち悪い」って言うもん……」

一花は物心ついた頃から何かを勉強することが好きだった。だからか、周りの同級生たちよりずっと勉強ができ、まだ小学二年生だというのにすでに中学生の問題を理解できている。そんな一花は浮いてしまっており、気軽に話せる友達は遥香しかいない。

「そっか……」

遥香はそう言った後、窓の外に目を向ける。中庭に植えられている桜の花びらがゆっくりと散っていた。

「遥香ちゃん、この本すごく面白かったから読んでみて!すごく勉強になったよ!」

遥香に一花は話しかける。ここに来るといつも一花は、自分が読んだ本を遥香に勧める。そして、読んだ本の話をたくさん話すのだ。その時間が一花は大好きだった。

ニコニコと笑う一花に対し、遥香はどこか元気のない表情だった。そして、その唇がゆっくりと動く。

「一花ちゃん、私、もうすぐ死んじゃうかもしれないんだって。お医者さんがお母さんたちに言ってた」

「えっ?」