Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜

そこへ、新しいシーツと布団、そして患者の手足を拘束するのに使う抑制帯を持って雪が病室に入って来る。

「やっぱり暴れてますね。昨日、準夜勤だった先輩が暴れて蹴られたらしいので、よかったら使ってください」

「ありがとう、雪ちゃん!」

絵梨花は泣きそうな顔をしながら雪から抑制帯を受け取り、それを一花たちが受け取る。ベッドの柵に患者の手足を固定した後、絵梨花は「ありがとうございました」と言い、血だらけの布団の包布カバーを替え始める。その時、絵梨花は雪に言った。

「そうだ!今日、五百十五号室の人がケモなんだ。CEからまたフローサイン借りてきてくれる?」

「わかりました!フローサインですね!」

看護師が使う輸液ポンプやフローサインなどは、CEと呼ばれる部屋に置かれている。それを借りに行くのが看護助手の仕事の一つだ。

(CEは確か、四階にあったな……)

四階は産婦人科と分娩室がある。新しい命の喜びの誕生で溢れている場所だ。桜士が四階のことを考えていると、雪と絵梨花の会話が耳に入って来る。