Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜

インスリンが過剰に分泌されてしまうと、体内にある血糖値が下がり、低血糖の状態になる。低血糖の主な症状は、冷や汗や動悸、異常な空腹感などがある。だが、症状が酷いと意識障害を起こしてしまい命を落とすこともある。医者や看護師など医療に携わる者ならば、重度の低血糖の恐ろしさは熟知しているはずだ。

「これを何の躊躇いもなく患者に投与したのか」

ゾクリと寒気が桜士の体に走った。



トイレから戻った後、桜士はニコニコと笑う一花とムスッとした不機嫌顔のヨハンに連れられてレントゲン室やMRI、薬剤部や生理検査室なども案内してもらい、時間があったので病棟の方にも足を運ぶことになった。

「ここが五階。東が脳外科で西が消化器内科な」

ヨハンが気怠そうに言い、一花が「せっかくですし、ナースステーションに挨拶しましょうか」とヨハンの腕を軽くつねりながら言う。消化器内科は春男が亡くなった場所のため、実際に目で見てみたいと思っていたため好都合だ。

「ぜひ、挨拶させてください」