Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜

トイレの個室に入り、白衣のポケットに入れておいたスマホの電源を入れる。すると、十から春男と数人の急変した患者の解剖結果が送られてきていた。その内容を見て、桜士は目を見開く。

「インスリン……!」

急変した患者の中には、その人が患っていた病による病死や老衰などもあった。だが、多くの急変した患者の死因はインスリンを過剰投与されたことによる低血糖により亡くなっていたのだ。これは、誰かが意図的に投与した殺人ということである。

インスリンとは、胃の裏側にある臓器・膵臓から分泌されるホルモンだ。糖質を含む食べ物を食べた時、食べ物は消化酵素でブドウ糖に分解され、小腸から血液中に吸収される。食事によってブドウ糖の数が増えてしまった時、膵臓からインスリンが分泌され、ブドウ糖を筋肉に送り込む。そして体を動かすエネルギーとなり、血糖値を調整する役割があるのだ。

だが、一型糖尿病を患っている人はこのインスリンがほとんど分泌されない。そのため、インスリンを注射し、血糖値をコントロールする必要がある。

「糖尿病患者に必要な薬を殺人に使ったということか……」